< 祖父母を肩車 >
父方の祖父母は明治末期生まれ。祖父は身長180cmで当時と
してはずば抜けて高い。祖母は逆に140cm台と小柄でかわいら
しい。祖父には幼少時、よく“肩車”をしてもらった。見晴らし
は大変良く、ゆうに2mは越えていたが家の鴨居によくおでこを
ぶつけて泣いていた記憶がある。
実家の元自分の部屋を整理していた時のことであった。3枚
の未使用タオルを発見した。“〇〇堂”と書かれていた。昭和35
年くらいから昭和末期まで祖父母が東京で経営していた街の印
刷屋である。
屋号と電話番号の下に「A」と「Y」と書かれ、私と妹の名前の
頭文字が残っていた。父は「ケンカしないようにしたんだな」
とボソッと言った。「どうしてタオルを作ったのかな?」と父
に聞いたら、「印刷屋が軌道に乗ったから一発奮起でネイム入
りタオルを作ったんじゃないか」と言っていた。
祖父母が亡くなって30年くらいになるが、私はまだタオルに
魂があると思った。お守りと思って鞄に入れている。
私は汗かきだ。初夏になるとポロシャツの首下にタオルをい
つも巻く。3時間程で結構汗が染みて濡れている。
祖父母のタオルを巻いた時、「あっ!今度は私が祖父母を肩車
」と思った。だいぶ軽いが。
夏は毎度お世話になる「〇〇堂タオル」。いつも祖父母と私
は一緒。支えてもらっているような気がして安心する。