asagao5-11’s diary

300~600字程度で、昔の記憶を記録する

< ごはんつぶ >

 毎日3食お世話になっている“ごはん”。幼少時、茶碗の所々に

残る“ごはんつぶ”を祖父が見て「一粒も残さず食べなさい。お百

姓さんたちが一生懸命に作ってくれたんだから」とよく言われた。

つぶ(粒)の集合体はパン以上に腹を満たしてくれる。その“ごは

んつぶ”が意外な所で活躍していた。“のり”だ。食べるのではなく

つけるのり。“ごはんつぶ”は指先につくとベトベトする。炊き立

てならなおさらだ。

 母は封書を出してきた。誰かに送るようだ。宛名を書いて封を

する。“のり”を使って、いや“ごはんつぶ”を使って粒を引きつぶし

ながら伸ばしてつけて封を閉じた。「ポストに入れてきて」と言

われ、僕は、内心こんなんでいいんだ!と思った。しかも食べ物

を使うとは。

 親指と人差し指で少し乾いた“ごはんつぶ”をこねくり回してい

たら、しだいに灰色になる。このこねくり感が柔らかくて好きだ。

だが、その姿を母に見られ「何をやっているの?食べ物でそうい

うことしないの!」と言われてしょげた。でも“のり”と一緒でしょ

と思ったが、口には出さなかった。