asagao5-11’s diary

300~600字程度で、昔の記憶を記録する

< 帰れない >

 運転免許を取るために海を渡った。片道運賃が無料というオマケ

付き。30年以上も昔のことである。当時としては合宿免許講習料

27万円はおそらく高い部類だろう。東京から船の夜行便で6時間、

熱海からだと高速ジェットで60分、場所は伊豆大島である。

 教習中は寮の仲間の助言に助けられた。クランク、S字、縦列駐

車など  “この辺に目線をもっていれば”  のポイントを共有した。数

多くのことを教わったが初めは頭と身体がバラバラだった。

 昔の教習内容は4段階方式。各段階で修了検定があった。私は1

~3までの各修了検定になかなか通らず立ち往生。これには参った。

沼津から来た多くの人達は2週間で卒業。20日で卒業、25日で

卒業がほとんどだった。同じ部屋の1人は考課測定が合格ラインに

届かず10日以上もロスした。このままでは帰れない。このままで

は新学期が始まる。

 両親に電話した。母は「取るまで帰って来なくていい!」と素気

ない。

それまで以上に座学とイメージトレーニングを繰り返した。路上教

習は観光どころではなかった。遠くにうっすら富士山が見え、波浮

港をチラッと見て、ほぼ毎日震度4前後の地震があり、路上には大

きな蛙がたくさん出てきてそれを踏みながら教習した。

 どうにか卒業検定までこぎつけた。教官は「早く卒業してくれ~

後が詰まっている。かといって検定が甘くなることはない。大島は

信号が少ない。だからより厳しい検定になるんだよ」と。

 ようやく合格!内地へ帰る許可が下りた。30日が経っていた。