< 手を洗うとき思い出す目線 >
< 手を洗うとき思い出す目線 >
母が「外から帰ってきたら!?」
私は「手を洗う」と言う。
私の年齢は4歳か5歳か。
父と洗面所へ行く。先に父が手を洗う。父の両手を下から覗き込む。
石鹸でくまなく洗う。大きくて分厚い手だ。
そして私の番、しかし両手を差し出しても洗面台が高くて洗えない。
父は私を抱えながら、もしくは風呂の椅子を持ってきてその上に立
たせてから洗う。
妹は完全に父に脇を抱えられ洗っていた。洗うというより濡らして
いた。毎度なにかブツブツ言いながら水遊びをしている。
先日、85歳の父と散歩に行った。歩く速度がゆっくりになって
いた。帰宅後、洗面所へ。久しぶりに父の手の洗い方を当時の子供
目線でしゃがんで見た。変わっていない。変わったのは手のシワが
多くなったことかな。そして父の目線と同じ目線で父の手を見た。
父はおじいちゃんになっていた。